PROJECT

プロジェクト事例

デジタル現場力強化によるSCM改革

大手製造業様

デジタル現場力強化によるSCM改革

製造
業務&システム変革

サマリー

特殊なニーズに応える個別設計・生産を強みとしてきたお客様でしたが、顧客からの旺盛なニーズに対して生産能力が追い付かず、受注残が積み上がる状況が定常化していました。問題の抜本的な解決に向けてデジタル現場力の強化を起点としたSCM改革とシステム再構築に取り組みました。

背景

同社の主力製品であるシール製品はゴムや金属を原材料とする部品です。機械装置や配管の内部から液体やガスが漏れるのを防いだり、外部から異物が混入するのを防いだりするために使用されます。同社では特殊なニーズに応える個別設計・生産を強みとして競合との差別化を図り、ビジネスを拡大させてきました。

一方で個別設計・生産は負担も生み出していました。特注対応の品目は10万種類にも上り、製造現場では毎回異なる製品を少量生産しなければなりません。原料のゴムは農作物であるため仕入れロットごとに品質特性が異なり、安定的な品質を実現することも容易ではありません。検査で基準を満たさない場合は最初から作り直すこともあります。

折から顧客からの好調な引き合いを受けて工場はフル稼働を続けていましたが、納期に間に合わずに受注残が解消できない状況が続いていました。状況を改善すべくSCM改革プロジェクトを立ち上げましたが、プロジェクトは難航していました。

提案方針

お客様からの相談を受けて、ウルシステムズは現状を分析。問題の本質は受注から出荷に至るバリューチェーンが全体最適化されていないことにあると判断しました。解決に向けたアプローチとして全体最適化の必要性を関係者に伝えた後、バリューチェーンを可視化する仕組みを整備し、現場がKKD(勘・経験・度胸)ではなくデータに基づいて問題解決に取り組める環境を整えるよう提案しました。

活動内容

改革プロジェクトは以下の3ステップで進めました。

  1. コンセプト作りと合意形成
  2. 問題の本質は現場が縦割りに最適化を進めてきた結果、バリューチェーンがつながっていないことにありました。製品開発・設計・生産技術・生産管理・製造・品質保証・営業・購買といった各部門が個別に最適化を重ねてきた結果、受注→設計→試作→生産準備→製造→試験→検査→出荷という価値の連鎖が途切れていました。

    SCM改革の目的がバリューチェーンを全体最適の姿に変えることにある。そうした背景を関係者が共有するために「ビジネスバリューのパイプライン化」というコンセプトを策定。工場長、開発・設計部門、生産技術部門、生産管理部門、品質管理部門、営業部門、購買部門が「めざす姿」を共有し、改革に取り組める状況を生み出しました。

  3. デジタル現場力強化による現場意識改革
  4. 既存システムは会計処理を主目的として機能やデータを設計していました。このため現場での問題解決や意思決定にデータが用いられることはなく、KKD(勘・経験・度胸)が重視されていました。こうした状況から一足飛びにSCM改革に取り組むことは困難です。まずは現場にデジタルを活用してもらうことが改革の第一歩だと判断しました。

    まずは生産・販売・在庫のデータを横串に連携するためのデータベースと計画や実績をリアルタイムに入力するための簡易システムを整備。バリューチェーンの状況をリアルタイムに把握できるようにしました。前後の工程の状況を見ながら意思決定できるメリットを実感した結果、積極的にデジタルを活用すべきだという機運が高まりました。

  5. SCM改革に向けた業務/システムの本格整備
  6. データに基づく問題解決・カイゼンが現場に定着するにつれて、当初はSCM改革への抵抗や疑念を持っていた現場担当者が全体最適に向けたアイデアを提案するようになりました。それらをとりまとめて業務とシステムのめざす姿を具体化し、本格的な業務改革/基幹システム刷新の計画を立案しました。一度に全てを置き換えるのではなく、改革テーマに優先順位を付けて、一つずつ着実に効果を挙げていく形を貫きました。

結果

ウルシステムズが伴走支援した4年間、景気の変動や新工場の建設などの事業環境は大きく変化しました。しかし、上記の3ステップを進めていくことで改革は着実に前進しました。徐々に狙った効果も上がっています。ウルシステムズの支援が終了した後も生販在をパイプラインとして捉えて全体最適化を実現するという最終ゴールに向けてお客様は改革を着実に進められています。