技術トピックス

「UMLaut®/J-XMLTM」概説 ~流通小売業向け次世代受発注ソリューション~

神林 飛志
2005年04月01日
※内容は公開当時のものです

現在、経済産業省および(財)流通システム開発センターが主導し、小売業・卸売業・メーカー各社が集まって、ポストJCA手順として流通業向けの次世代電子商取引の標準プロトコル(JEDICOS-XML)が策定されつつある。2005年4月現在、JEDICOS-XML仕様に基づいた実証実験も完了し、本格的な普及期に到来しつつある。ウルシステムズでは、このJEDICOS-XML仕様にいち早く対応したソリューション「UMLaut/J-XML」(以下 J-XML)を業界に先駆けて発表した。本稿では、J-XMLの利点と特徴を概説する。

1.J-XMLの背景

まず、現状までの流通業界のEDIプロトコルについて簡単にその歴史を振り返ってみたい。

現状の流通業界における基本的な手順である「JCA標準転送フォーマット(以下JCA手順)」は、すでに成立以来25年来利用され続けている。規格としては古いが、業界に広く普及したデファクト標準である。原則としてT/A伝票をベースにした固定長の受発注の仕組みであり、公衆通信回線での利用が前提である。

近年のEDIアプリケーションの多様化に伴い、JCA手順の後継が議論されるようになり、最初に登場した標準仕様がJEDICOSである。これは経済産業省及び(財)流通システム開発センターが主導し制定された。JEDICOS仕様はメタデータの規約も策定しており、JCA手順の問題であった固定長のデータ制限を撤廃し、データレイアウトの変更を可能とする画期的なものであった。このJEDICOSの利点を活かしながら広く業界へ普及させるべく経済産業省が策定しているのがJEDICOS-XMLである。

JEDICOS-XMLは、標準の通信プロトコルとして国連基準のebXMLを採用し、相互接続性を格段に向上させている。また民間各社での自主実験の成果を取り入れ、当初から普及を視野にいれた仕様策定となっている。データの構造や業務フローポリシーなどはすべて新しい概念で設計されており、JCAやJEDICOS等の長所を引き継ぎつつ新しく作った次世代にふさわしい流通受発注プロトコル、と言うべき内容である。

ウルシステムズでは、このJEDICOS-XMLを採用したソリューションJ-XMLを業界に先駆けて発表した。実際のビジネス環境を考慮した様々な付加機能を追加し、利便性を追及したものである。製品としてのJ-XMLの概要はJ-XMLプロダクト説明を参照されたい。以後の各章において、J-XMLの特徴的な機能と利点について説明する。

2.受発注・物流・決済の多様な業務フローを網羅

J-XMLの大きな特徴は、日本の流通業界にあった様々な業務パターンを網羅しつつ、変更を容易にしている点にある。

【1】 日本の商習慣にあった多様な業務パターンを網羅

J-XMLは、日本の商習慣に合致した企業間の多様な業務フローを網羅しており、受発注から物流、決済までの一連の情報を標準のXMLフォーマットを用いて企業間で交換・共有できるソリューションである。対応している受発注・物流・計上・決済の業務フローは、その組み合わせから実に合計で6912パターンに及ぶ。この多様なパターンは、流通業界の複雑な業務フローを分析し、ブロック化する手法から生み出された。

従来のEDIの考え方は「相対する二人の当事者でのみ取引が完結するモデル(Two-Party transaction model)」が通常であり、送信者と受信者という考え方しか無かった。これに対してJ-XMLは、データに基づいて処理を行う「業務」と「業務を行う主体(アクター)」(具体的には「受注者」「発注者」「出荷者」「入荷者」等がある)を定義している。それぞれの業務は、アクターとその役割を定義したサービスの組み合わせによって構成される。このサービスの組み合わせのパターンを多数用意することにより、より大きくかつ多様な実態に合ったビジネスモデルを構築することができる。

【2】 構成ファイルの変更だけで、ビジネスモデルの変更に柔軟に対応

上記のようなサービス組み合わせによる疎結合のビジネスシステム構築は、SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)と称される。サービスを組み合わせることにより、低コストでかつ柔軟性の高い仕組みを構築する手法である。J-XMLでは、実現したい各企業の業務フローを構成ファイルの設定で容易に記述できるようにしている。取引先や取り扱い製品に応じて業務フローが変わっても、構成ファイルを変更するだけで済む。ビジネスモデルや業務フローの変更に柔軟に対応できる仕組みを内包しているのである。

3.インターネット技術を使った高速で低コスト・高信頼なEDI

インターネットを活用することで、従来までのJCA手順に比べてはるかに高速で低コストなEDIを実現できる。J-XMLではこれに加えてデータの信頼性も確保している。

【1】 より早く、より安く

従来までのJCA手順では、長い時は1~2時間もかかってデータをやり取りしていた。ところがインターネットを使うと、月額数千円で十分なスピードの回線が確保できる。100Mbpsの回線であれば、9600bps(多くのJCA手順で使われているモデムのスピード)に比べて理論値で約10,000倍である。例えば生鮮物流のひとつの目標である「収穫から販売までの4時間流通」等の実現が視野に入ってくる。EDIにかかる時間の短縮ができれば、商品の流れや流通の仕組み自体を大きく変えることができるのである。

更にインターネットによる低価格なEDIは、様々なビジネスチャンスを特に中小の食品メーカーや「こだわりの職人」に道を開くことになる。生鮮は特に季節性が高く、一年中EDIを稼動させないケースも散見される。必要な時だけ安くEDIの仕組が利用できるのであれば、小売・卸・ベンダー各流通のプレイヤーが季節に応じたきめの細かいビジネスを展開できることになる。

【2】 ebXMLによるインターネット上の高信頼なデータ交換

J-XMLはebXMLをベースの通信プロトコルとして採用している。ebXMLは、現在ISOにも指定されており、国連の管轄下にある世界標準(グローバル・スタンダード)の通信プロトコルの規約である。インターネットの弱点である「信頼性の保証」、これがebXMLの最大の利点である。面倒なエラー時の再送や二重送信時の削除処理を行う必要がない。

従来までのWebサービスに代表される様々な通信基盤では、どうしても脆弱性が指摘され十分普及には至っていない。企業間の信頼に足るデータ交換を行うためにebXMLの採用は必須である。

4.XMLによる拡張可能なデータフォーマット

J-XMLはその名の通り拡張可能なXMLをデータフォーマットとして採用している。XMLの利点を最大限活用することで、下記のような利点がある。

【1】 取引先毎に異なるデータフォーマットへの対応が容易

従来のプロトコルでは取引先ごとにデータフォーマットが違うため、全て電文の変換を行う必要があった。J-XMLでは基本的には自社フォーマットを一度共通のフォーマットに変換すれば良い。新規取引先が追加されても簡易に対応できるのである。

【2】 業務フローが違ってもフォーマット変換が不要

従来のプロトコルではデータフォーマットを「トランザクション・スキーム」ごとに変換する必要があった。同じ商品であってもTC・DC・帳合等の物流・商流に違いがある場合は、違うフォーマットで電文を生成しなければならない場合があった。J-XMLでは業務の組み合わせの柔軟性を最初から確保しており、業務フローが変わってもフォーマット変換は一切不要な作りになっている。

【3】 ICタグ情報などを柔軟に追加、トレーサビリティに対応

XMLデータのメリットのひとつに、新たな製品情報などの付加データに対応できることである。J-XMLのFeatureListのタグを利用することで、製品の「付加価値情報」を自由に企業間でやり取りし共有することができる。例えばトレーサビリティの情報を付加したければ、FeatureListにICタグ情報を入れるだけでよい。

ご存知の通り、トレーサビリティの情報は、安心・安全のかなめであり、消費者・小売・加工業者・卸業者・生産者・生産者団体のために必須である。しかし未だ生産者~小売の間での情報はつながっていない。特に途中に加工の状態が入ると途端に歯切れが悪くなる。店舗でのインストア商品に至っては、何が入っているのだか、よくわからない状態になり、内容表示が精一杯(これですら、かなり怪しいのが現実であるが)であり、デリカ商品のトレーサビリティなど現状では夢また夢である。一般的にトレーサビリティに限らず付加価値情報は生産者から小売販売店舗までつながっていなければ意味がない。この点、J-XMLをインフラとして利用することで、製品の生の情報を最終的に店舗の作業場まで引っ張っていけるようになる。

5.明細トレース機能

J-XMLの最大のメリットが本節で述べる明細のトレース機能である。トレーサビリティ(=個品追跡)という社会的要請に応えるためにも、明細レベルのトレースができることが今後の受発注システムの大前提になる。

【1】 照合処理業務の負荷の軽減

従来から流通業の決済は「伝票単位」または「伝票合計単位」であり、総額ベースの決済処理であった(一般にダラー管理と言われる)。従ってもし返品や修正があった場合には、膨大な伝票の山の中から個別に「物理的な伝票」を探し出し、問題のある箇所を見つけ出し処理する必要がある。これは強烈に現場に負荷がかかる作業である。

返品だけならまだしも、原価の変更や日を跨いだ分納などが起きた場合の照合処理は辛酸を極める。「照合課」という専門の課まである会社まで存在するくらいである。この部隊の方々のストレスとプレッシャーは想像に難くない。照合という不条理な業務から現場を開放するために、明細トレース機能は効果的である。

【2】 店舗で発注状況の確認が可能

明細トレースができると、店舗で発注状況を逐次確認できるようになる。実は小売の現場としては非常にうれしい機能である。店舗担当者としては、自分の発注が今どのような状態であるのか、常に把握しておきたい。発注はちゃんと取引先に届いたのか、受注回答は来たのか、自社の物流センターまでモノは着いているのか。このためだけに発注済みのデータをわざわざプリントアウトしている現場も多い。

J-XMLの発注明細のトレース情報を利用すれば、発注のステータス管理を容易に行える。トレース情報を参照する仕組みもJ-XMLにはすでに組みこまれている。この機能が業務に与える影響は非常に大きいため特に強調しておく。

【3】 伝票レスが可能となる

伝票レス!まさに長年の情報システム部の野望であるが、なかなか達成できない。一部の小売では達成できているが、業界全体ではまだまだ無理である。なぜか?「だって、いざって言う時に、明細がなければ決済できないじゃないですか?それに、イレギュラーであるはずのFaxや電話発注は、がっちりレギュラーポジションを固めていらっしゃるじゃないですか?」ごもっとも。これでは伝票レスは困難である。要は「イレギュラー」な売買の決済までサポートしたインフラが登場しない限り、伝票レスの実現は現実的には不可能なのである。J-XMLはイレギュラーな業務フローをあらかじめ取り込んだ作りになっている。そのため例外業務ゆえに発生する余計な伝票が必要なくなる。J-XMLがインフラとなれば、夢の伝票レスの実現が俄然現実味を帯びてくるのである

6.様々な利用形態に対応

実際の流通小売業向け受発注システムには様々な利用形態への対応が求められる。例えば大企業は自社内に大型のサーバを設置して自ら取引業者と直接接続するだろうし、中小企業は自社内にはサーバを置かずWeb端末のみのクライアントで利用したいだろう。他にもVANや3PLなどの業態もある。そこでJ-XMLには、大企業から中小企業まで、企業取引の規模に応じた様々な導入形態を用意した。サーバ対サーバ方式、サーバ対クライアント方式、Web型ASP方式などすべてを1つのパッケージで実現することができる。

7.既存基幹システムとの連携、各社ソリューションとの融合

J-XMLには、会計やMDなどの既存の企業内他システムとのインタフェースを設けてある。これを利用することで各企業の既存システム資産を最大限活かすことが可能である。

他システム接続用のフレームワークを標準で提供しており、アダプターが自動で生成される仕組になっている。この仕組みにより、個別の作りこみがない企業の場合は数時間で接続が完了している。また個別の修正があっても3人日で完了するほど迅速にシステム連携を実現している。また、J2EEやXMLなどの業界標準に準拠しているため、各企業の様々な業務アプリケーションと組み合わせて新しいソリューションを作ることも容易である。

8.おわりに

流通業界の改革の気運が高まりつつある中、新しい企業間取引のインフラが求められている。これは日本の流通業の強みを最大限に活かしたものでなければならず、食の安全など消費者の生活に多大なインパクトを与えるものである。今回我々が提供するJ-XMLは、まさに業界共通のインフラとして設計された。業界全体としてはようやく改革のスタートラインに立っただけであるが、この大きな流れを加速すべくお客様のフィードバックを頂きながらよりよいソリューションとしてJ-XMLを仕上げていきたいと思っている。J-XMLが世の中の流れに少しでも貢献でき、広く流通業界の改革につながっていけば幸甚である。

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