
生産性を上げるIT活用術
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“前年実績“は役立たない個店主導の販売予測を 第5回
| 第5回ポイント | |
| 1 | 今年のような冷夏では、前年実績に基づく販売予測の精度は著しく低くなる。しかし勘頼みや本部の指示待ちでは、ますます売り場は乱れて売れなくなってしまう。 |
| 2 | 本部による中央集権的な仕組みで、個店ごとに正確な販売予測を立てるのは無理がある。販売予測の精度を高めるために、個店ごとに細かくデータを見ていける仕組みが必要になる。 |
| 3 | 販売予測は現場が立て、本部はその意志決定に役立つツールをITで提供すべき。これは情報システムだけではなく、会社全体の仕事の進め方に関わる問題で、本部が現場を信用していなければ不可能だ。 |
明日、今週、今月、何をどのように売るか?売り場をどのように作れば予算を達成できるか?こうした販売予測は食品スーパーで働く人々にとって、日々、当たり前にやっている基本的な作業です。販売予測は、売価、天候、地域性、フェース数、POPの有無、チラシ、関連販売の有無など、様々なデータを考慮して計算する必要があります。しかし、今年の夏は10年ぶりという近年まれに見る冷夏でした。事前の販売予測が外れてしまい、売り上げの低迷やロスの増加に悩まされた食品スーパーが少なくないのではないでしょうか。
根拠が乏しい前年実績勘や本部の指示待ちも危険
販売予測でありがちなのは、「昨年はどうだったか」と、すぐに前年の実績を持ち出すことです。ここには大きな落とし穴があります。特に今年のように冷夏では「前年比」というデータはあまり役に立ちません。特に気温で売れ行きが左右されやすいドリンク・日配品などの商品については、全く役に立たないと言っていいでしょう。
さらに言えば、来年の夏の販売予測を立てるために、冷夏である今年のデータを活用しても、根拠が乏しいデータにしかなりません。猛暑だったり冷夏だったり、気温の変動が激しい昨今では、販売予測を前年実績だけに頼ることは難しくなっているのです。
それではどうすれば良いのでしょうか?多いのが、個人の勘や本部の指示待ちに走ってしまうことです。こうすると問題はより深刻になり、さらにモノは売れなくなります。
一般的に言って、暑い夏よりも寒い夏は、確かにモノが売れません。飲料やビールは気温の影響を大きく受けますし、雨が降り続ければ来店客数は減るのが普通です。
しかし、売れないのは、それだけが原因でしょうか?個別の商品の特性や販売見通し、個店ごとのお客様の購買動向などを、正確に把握した結果の不振だったのでしょうか?
これは、環境の変化に対応できない、今の販売予測の仕組みそのものに問題があります。今やITは販売予測に欠かせないツールですが、多くの販売予測システムは前年のPOSデータに頼っているのが実情です。この仕組みを考え直さない限り、“前年実績の呪縛(じゅばく)”は付きまといます。非常に難しい問題ですが、この問題の解決に挑戦していかなければなりません。

ITの進歩に伴い個店情報の管理が可能に
個店の情報をどう生かしていくかが、販売予測でもカギになります。優秀な店長の中には自分で表計算ソフトなどのマクロ計算プログラムを利用して、自分の店で売れた商品や売れなかった商品、そして、そのときの売価や天候、展開した販促方法といった情報を管理し、販売予測に役立てています。
こういった現場の知恵を、本部は吸収して生かしているでしょうか?本来のチェーンストアの原理原則からいうと、本部レベルで個店の情報をすべて管理するのは、かなり難しいと言えるでしょう。本部の役割は個店の差異をできるだけ取捨選択して、全体を見るのが仕事だからです。確かに個店のコントロールを本部が行っているチェーンもあります。しかし、これが行き過ぎると、本部の間接費がかかりすぎてコスト高になるでしょう。
個店に関する情報を、コストをかけずにどう管理していくかは、これからの食品スーパーにおけるITの大きな課題です。しかしパソコンの高機能化やインターネットの普及により、大規模なホストコンピューターを本部に置く中央集権的なシステムを作らなくても、各店ごとに分散させる仕組みを作ることが可能になっています。
ITは「分散指向」に動いており、個店対応に向かうチェーンストアの変化にマッチしているのです。
本部が提供する役割は「使える武器を低コスト」で
では、現状の情報システム部で対応できているかというと、そうでない場合がほとんどです。しかし、これは情報システム部門だけに責任があるわけではなく、会社全体のあり方の問題です。個店主導の仕組みは、本部と店舗の役割を再設計し、ITの使い方や現場の行動、社員に対する教育と、すべてがかかわる問題になります。
そもそも個店主導の仕組みを作る上では、本部がチェーン全体の販売を予測するのではなく、各店がそれぞれ販売予測を立て、その合計がチェーン全体の販売予測となる、という体制でなければなりません。しかし、本部は「店舗に任せては信用ならない」とコントロールしたいのが本音でしょう。それで良い時代があったのも確かです。
しかし、状況は変わってきています。就職難の昨今では、優秀な社員や高い能力を持ったパートを採用しやすくなっています。現場の“考える力“のポテンシャルは高まっているはずなのです。そこで本部に求められるのは、こうした人たちにITで情報武装してもらう仕組みを、いかに低コストで作り上げるか、ということです。
戦争に例えれば、現在は戦況が不透明で、いちいち大本営にお伺いを立てていては十分に戦えません。そこで各部隊が個別判断で戦うのがベストになってきます。このときに意志決定に役立つ“武器“があれば現場も心強い。こうした“武器“を提供し、店舗をサポートすることこそが、これからの本部の役割として重要なのです。


在庫は単品で管理する生鮮でも手順次第で可能 第6回
| 第6回ポイント | |
| 1 | 多様な商品を扱う食品スーパーにとって、在庫管理は非常に難しい問題だ。商品のロケーション管理をはじめ、生鮮とドライの管理方法の違いや、在庫計算のあいまいさといった問題点がある。 |
| 2 | 食品スーパーの在庫管理は、ITを活用した単品管理システムを導入することが理想である。一品ごとの原価・粗利益・在庫数を把握できてこそ、適切な利益管理が可能になる。 |
| 3 | 現在、様々な食品分野で課題となっているトレーサビリティも、突き詰めれば単品管理と切り離しては考えられない。単品管理の仕組みを作ることが、消費者にとってもメリットをもたらす。 |
食品スーパーにとって、在庫管理は適切な利益を確保する上で欠かせません。過剰在庫は収益を圧迫し、在庫が不足しても販売チャンスを逃します。しかし、食品スーパーのように1万アイテムを超える商品を取り扱う業態では、各店ごとの正確な在庫数を常時把握するのは非常に難しいのが実態です。
在庫管理の理想は単品管理三つの課題の解決が必要
私は、これからのスーパーの在庫管理はIT(情報技術)による単品管理が重要だと考えています。商品1個1個について、いくらで仕入れて、いくらで売ったかが明確に分かるようにし、在庫は原価で100円の商品が12個、120円のものが10個というように、単品ごとに在庫数と粗利益、原価を厳密に管理することが理想です。
現在の食品スーパーで、店頭の在庫を正確に把握しようとすると、棚卸しをして実際の商品の数量を数えるしかありません。しかし1万アイテムを超える商品を取り扱うスーパーでは、人員とコストがかかる棚卸しを頻繁に行うことはできません。多くは計算により在庫高を求めていますが、これは後述するように実際の在庫と誤差が発生しています。
食品スーパーにおける在庫管理の難しさは、大きく分けると次の三つがあると考えています。
(1) ロケーション管理の難しさ
(2) 生鮮部門の在庫管理の難しさ
(3) 在庫の計算方法の不正確さ
順に説明していきましょう。まず(1)のロケーション管理の問題です。スーパーでは商品がバックヤードにどれだけあり、売り場にどれだけあるか、正確に把握するのは困難です。特に夏場のドリンク類など、売り場への補充が頻繁になるものについてはなおさらでしょう。
次に(2)の生鮮での在庫管理の難しさがあります。現在は生鮮食品のインストア加工が盛んです。これらの生鮮食品は、入荷した材料を店内で加工して商品化します。例えばロース肉のブロックから、焼き肉用やしゃぶしゃぶ用など様々な商品を作ります。入庫形態と販売形態が変わるために、在庫管理は非常に難しくなってしまいます。
| 在庫管理の解決すべき問題 | |
| 1 | 売り場にあるのか、バックルームにあるのか、在庫のロケーション管理があいまい。 |
| 2 | 生鮮とドライで管理方法が異なる。特に生鮮は原材料として入荷し、商品化して販売するので、正確な在庫管理をしようとすると難しい。 |
| 3 | 在庫高の計算をケース売価などによる「ひと山いくら」といった“どんぶり勘定”で行っており、正確性に欠ける。 |
ITによる単品管理で様々なロスの低減を図る
最後の(3)の問題です。在庫高を帳簿から計算で求める方法は、食品スーパーの多くで使われています。この場合の在庫高の計算は、単品の原価を積み上げると計算が煩雑になるため、カテゴリーごとに、売価に原価率をかけたものの合計を求めます。似た原価率の商品をまとめてカテゴリーとして扱うことで計算は簡単になるのですが、ある意味「どんぶり勘定」であるため、計算上の数値と実際の数値では誤差が生じてきます。「不明ロス」として処理されるものですが、これが5.10%にも及ぶ場合があるのです。
食品スーパーの経営は、廃棄ロスや値引きロスといったロスとの戦いです。しかし在庫のそもそもの計算方法が厳密性に欠けると、正確なロスも分かりません。つまり根本的な解決には、従来の計算方法から抜け出す必要があるということです。そこで、IT活用による単品管理が必要となるのです。
もとより、単品管理は製造業では当たり前です。部品単品ごとの利益を厳密に管理するといったことは、製造業に一日の長があります。こうした製造業の長所は流通業でも取り入れるべきでしょう。 現在ではテラバイト級のデータを管理するような大容量・高度なシステムを、以前よりも低コストで構築できるようになっています。商品単価が安い流通業でも、単品管理が可能な状況は整ってきているのです。
単品管理による在庫管理ができ、粗利益や原価の計算が単品単位でできるようになってはじめて、商品のSKU(在庫管理単位)の数や、1パック当たりに商品がいくつ入っているか、という入り数の問題、適切な値入率といった問題について、データを見ながら判断できるようになるのです。
単品管理ができればトレーサビリティも可能に
食品業界では、いまだに一つひとつの商品を追跡する仕組みができていません。食品は日持ちしないので、3.4日しか保たない在庫をわざわざ単品ごとにデータ管理する必要はない、と考えられているのです。
しかし、この考え方が時代遅れであることは明白です。これからの社会では、消費財がただ消費されるだけではなく、どこで生産され、加工されたのか、といった情報まで含めて伝達されることが求められています。一つひとつの商品に対するケアが重要になっている中で、企業として対応ができていないのが問題です。
実は単品管理とトレーサビリティは、表と裏の関係です。トレーサビリティとは、商品単品の生産から販売までの履歴を追跡すること。単品を管理する、という点については、単品管理とトレーサビリティは変わるところがありません。ITにおける情報の扱い方は、ほぼ同じなのです。
粗い業務では単品管理は無理業務手順の見直しも必要に
これまで単品管理システムの構築に取り組んだ経験から言うと、生鮮品も含めて、単品管理はやろうと思えばできます。しかし、大きな問題が一つあります。ロケーション管理は適切か、商品がマニュアル通りに正しく作られているかといった、店の業務の精度に依存する部分が大きいということです。
経験上は、鮮魚や惣菜部門は比較的レベルが高い単品管理が可能でした。これは既に実際の業務が、細かく定められているからでした。一方、青果部門では単品管理は思うように進みませんでした。商品マスターへの登録をはじめ、商品化の手順などについて、業務に粗い点が見られたからです。単品管理を適切に行うには、まず現場の業務手順を細かく設計する必要があるということです。

