
Ajaxやマッシュアップによる
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企業システムを変え得るXMLベースの技術の最新動向として、Ajaxやマッシュアップ、RESTといったWeb 2.0技術、ESBやBPMをはじめ環境構築ツールが出そろってきたSOA、標準化が進むオフィス文書などを解説する。また、XML利用が拡大するにつれてニーズを急速に高めているXML-DBについても、製品タイプ別にその使いどころを述べる。なお、本パートの最後に、主要なXML-DB製品を一覧で紹介する。
XML がビジネスをシームレスにつなぐ
昨年、IT 業界を最も賑わせたキーワードと言えば、間違いなく「Web 2.0」だろう。サービス面ではGoogle や動画共有サイトのYouTube、ソーシャルネットワークサービス(SNS)プロバイダのmixiなど が、また技術面ではAjax、Ruby on RailsなどがWeb 2.0の枠組みの中で語られた。
とはいえ、盛り上がったのはインターネットのコンシューマ領域であり、本誌読者の多くがかかわるエンタープライズ領域には、関係の薄い話題だったかもしれない。しかし、今年はXML が持つ“つなぐ”ための技術という側面を通じて、エンタープライズ領域にWeb 2.0技術が入ってくる年になりそうだ。一技術としてのXML は標準のデータフォーマットに過ぎないが、XML データを利用するシステムが増えれば、あらゆる領域間の連携が実現されるからだ。
ここでは、XMLの“つなぐ”能力が生み出す価値について、「新サービスの創造」「業務プロセスの最適化」「開発プロセスの革新」「標準仕様の拡充」の4つの視点で展望する(図1)。

図1 XML技術が生み出す価値
新サービスを創造するWeb 2.0
XML が支える新しいサービスの創造という意味では、Web 2.0 がまさにその典型と言えるだろう。
Web 2.0 の背後にあるXML 技術
Web 2.0 はとても分かりづらい概念であるが、「Web 2.0的なもの」の具体例を見ていくと、おぼろげながらその輪郭が見えてくる。ここでは、Web 2.0的と呼ばれる2種類のサービスを紹介する。
1 つは、“集合知”を主なコンテンツとするユーザー参加型のサービスだ。集合知とは、サービス利用者から提供される知識やコンテンツ、またはその意味情報などを指す。サービスプロバイダは集合知を集約し、参照できる場をWeb 上に提供する。例えば、各社のブログやYouTube の「タグ(コンテンツ内容を表わす意味情報)付け」や、Amazon の「カスタマーレビュー(商品を購入した人たちのコメント)」、mixiをはじめとするSNS などは、このタイプのサービスである。
もう1つは、Ajax やマッシュアップに代表されるWeb アプリケーションの新技術を使ったサービスである。Google が提供するGoogle Maps などはその代表例と言えよう。
これらのサービスを、必ずしもXML が可能にするわけではないが、基盤の技術要素の中にはXML が見え隠れする(図2)。ブログの更新情報を購読者に通知するデータは、RSSやAtomというXMLフォーマットで書かれている。「ポッドキャスト」と呼ばれる音声/画像データの配信方法では、RSSで送られてくるコンテンツの更新情報を受信すると自動的にダウンロードする。また、Webサービスのマッシュアップ(組み合わせ)に使われるRESTやAjax(後述)といった技術でもXML データが利用される。Web 2.0的サービスの実現には、XMLの普及が大きく影響しているのである。

図2 Web 2.0 を支えるXML
企業内でのWeb 2.0 技術の活用
企業におけるWeb 2.0技術の活用というと、社内でのブログ活用が挙げられよう。ブログを使って、社内のコミュニケーションの活性化と情報共有を実現するのが目的だ。すでに「イントラブログ」と呼ばれる、社内ブログの専用ツールも市場に出荷されており、主な製品として日立製作所の「BOXER」、フィードパスの「blogengine」、ドリコムの「ドリコムブログオフィス」などがある。
また、Ajax によるリッチクライアントやWeb サービスのマッシュアップは、企業内のアプリケーション統合の面からイントラネットでの採用が今後本格化する可能性が高い。これについては、次節で詳しく述べる。
SOA の実現を支えるXML
SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)は、システムが提供する機能を「サービス」という単位で構成し、それらを組み合わせて新しいサービスを構築するという考え方である。個々のサービスは、人が行なう業務の単位でとらえることができる。SOAシステムでは、業務プロセスをサービス単位で切り出し、標準仕様であるXML データを相互にやり取りすることで各サービスを連携させる(図3)。そのため、業務プロセスの最適な組み替えを容易にすると期待されている。
そこで大手ミドルウェアベンダは、企業内でSOA に基づく連携を可能にするツール群を「SOA プラットフォーム」として提供している。その中には、サービス間でのXML メッセージ交換を行なう基盤である「ESB(Enterprise Service Bus)」、ビジネスフローを定義してシステム連携を可能にする「BPM(Business Process Management)」といったツールが含まれるなど、機能的にもかなり充実してきている。
しかし、現実にSOA でシステムを構築するには、ツール以前に何をサービスにして、どのように提供するべきかを適切に決めることのほうがキーになる。こうしたこともあり、各ミドルウェアベンダではプラットフォーム製品だけでなく、業務プロセス設計の支援サービスも提供する動きが顕著になっている。

図3 SOA のコンセプトとそのプラットフォーム
オフィス文書がXML 形式で標準化
マイクロソフト製品の寡占状態にあるオフィスツールだが、そのデータフォーマットの標準化をめぐり、「ODF(Open Document Format)」と「Office Open XML」という2つの仕様がその影響力を争っている。ただ共通しているのは、両仕様ともXML形式であることだ(図4)。
昨年OASIS標準となったODFは、さらに国際標準の公的機関ISO標準としても認定され、普及を促進する団体ODF Allianceの動きも活発になっている。ODF 準拠のオフィススイート製品には、米サン・マイ クロシステムズが支援するオープンソースソフトの「OpenOffice.org」があるが、ほかにもジャストシステムのワープロソフト「一太郎」がいち早くODF に対応。また、Web 2.0的サービスとして提供されているGoogleの文書編集Web アプリケーション「Docs&Spreadsheet」もODFへの対応を始めた。さらに、IBMがLotus Notesの次バージョンでODF サポートを表明するなど、支持が急速に広まっている。
これに対し、マイクロソフトは同社のオフィススイート製品の最新版「2007 Officesystem」のデータフォーマットであるOfficeOpen XMLを、欧州の標準化団体ECMAに提出。昨年、標準として認められた。さらに現在、ODF と同じくISO 標準の認定を得る動きに出ている。OASISやECMAの標準は、IT 業界の“デファクトスタンダード”としての意味合いしかないからだ。各国政府が国際的な標準化機構として認めるISOの認定は、マイクロソフトとしてはどうしても得たいところだろう。

図4 ODF vs. OpenXML
開発プロセスを変えるXML-DB
次は、XMLの“つなぐ”能力が生み出す価値を「開発プロセスの革新」という視点から見てみよう。キーテクノロジーは「XMLデータベース」(以下、XML-DB)だ。
XML-DB は、固定的なスキーマを必要とするリレーショナルデータベース(以下、RDB)と比べて、データ構造の変化に強い特性を持っている。そのため、データ構造が複雑だったり曖昧だったりするために、仕様を固定するのが難しいシステムの構築や、開発中に生じる仕様変更への素早い対応ができる(図5)。

図5 XML-DBによる変化に強いシステム構成
主要RDB もXML-DB 機能を本格装備
昨年、IBMは同社のRDB製品の最新版「DB2 9」を、“ハイブリッド型”のデータベースとして発表した。ハイブリッド型とは、RDB とXML-DB の両方のメカニズムを内蔵し、両者を区別なく扱えるものだ。XML専用データ型を持ちXQueryに対応しているという意味では、「Oracle Database10g」や「SQL Server 2005」もハイブリッド型と言えるが、DB2 9のXML-DB機能はネイティブ型に匹敵する性能を備え、検索の統合をさらに進めたものだ。
ネイティブXML-DB 製品の動きも活発だ。東芝ソリューションは「TX1 V2」で、全文検索機能とデータ連携機能を追加した。三井情報システムは、同社が販売するXML-DB 製品「NeoCore XMS」をベース に、ドキュメント管理ソリューション「DocuDyne」やコンテンツ管理ソリューション「XCMS」を発表した。サイバーテックも全文検索機能などを強化した「Cyber Luxeon Ver 2.0」を出荷した。
こうしたXML-DB のトレンドについては、後ほど詳しく述べる。
XML-DB を活用する仕様/製品も進化
今年1 月、XML-DB向けの標準問い合わせ言語「XQuery 1.0」がXPath 2.0、XSLT2.0とともについに勧告、つまりW3C(World Wide Web Consortium)の標準となった。主要なXML-DB 製品は草案レベルの 仕様に対応済みだが、今回の仕様確定によってXML-DB 製品の相互運用性が高まり、XML-DBの普及も加速するだろう。
また、XML-DB活用という面では、ジャストシステムのXML 文書エディタ「xfy」にも注目したい。xfy では、通常のXMLデータはもちろん、数式を記述するMathML やベクターグラフィックスを描くためのSVGといったXML標準ボキャブラリを使用したXML文書の表示/編集もできる。DB2 9およびOracle 10gのXML-DB機能との連携を強化したエディション「xfy Enterprise Solution」も提供されており、XML-DB に格納されたXML 文書を編集するフロントエンドツールとして、またXMLDBアプリケーションの実行環境として今後の動向が注目される。
XML 標準仕様の拡充
XMLの標準化の動向が注目され続けるのには理由がある。XML が「標準を作るための標準」だからだ。XML は新しい技術の基盤を作ることができるのである。
そこで、ここではXML の基本仕様やWeb サービスの領域で大きな影響力を持つ標準化団体「W3C」「OASIS」「WS-I」の動向を確認しておく。標準化が進展した主な仕様については、表1 をご覧いただきたい。

表1 標準化が進展した主な仕様
XML 基本仕様の標準化を担うW3C
W3CはWWWで用いられる技術の標準化を進めるための団体である。これまでXMLを筆頭に、XML SchemaやXSL(Extensible Stylesheet Language)などの基本仕様や、SOAPやWSDL(後述)といったWeb サービスの基盤となる仕様などの標準化を行なってきた。
XMLの基本仕様については、先にも述べたようにXSLT 2.0、XPath 2.0、XQuery 1.0を勧告としたほか、Web サービス関連の仕様であるWS-Addressing 1.0も勧告とした。WS-AddressingはSOAP中にWebサ ービスのアドレスを含めることで、HTTPやSMTP(Simple Mail Transfar Protocol)といったネットワークのトランスポート層に依存しない連携や、非同期的で複雑な複数のWeb サービス間の通信を実現するものだ。
XML の実業仕様を標準化するOASIS
OASIS はビジネス情報の交換にかかわる仕様などの標準化を行なう団体で、XMLの前身であるSGML(Standard Generalized Markup Language)の時代から活動している。
OASIS では、商取引のためのボキャブラリ「ebXML」や、先ほど紹介したオフィス文書向けデータフォーマットであるODFの標準化などを手がけてきた。最近では、商取引についての基本的なメッセージを定めるUBL( Universal Business Language)2.0 や、商取引のプロセスを記述するためのebBP(ebXML Business Process Specification Schema)2.0.4を標準仕様に定めた。これらの商取引関連の仕様は、企業間取引の自動化に重要な意味を持ってくる。
Web サービスに関しては、多数の分散したWebサービスを管理するのためのWSDM(Web Services Distributed Management)1.1 が標準となった。この標準は、W3C のWS-Addressing や、OASIS 標準になっているイベント通知の仕様WS-Notification、ステートフルなWeb サービスを実現するためのWS Resource Frameworkを用いながら、多様なシステムの管理を単一のインターフェイスで行なうことを可能にする。
また、SOA のリファレンスモデルを定めたSOA-RM 1.0も標準化した。
Web サービス連携を保証するWS-I
WS-Iは、Web サービスの相互運用性を保証するための標準化を進める団体である。これまでにBasic Profile と呼ばれるWeb サービス実現のためのガイドラインを策定し、標準のWeb サービス仕様をど のように実装すべきかについて具体的な指針を示している。昨年はBasic Profile 1.2を含む数本のワーキングドラフトをリリースした。その中でWS-Addressingの使用についても定められており、異なるベンダの製品間でWeb サービスのより高度な連携が可能になる。
XMLに関する最近の動向は以上のとおりだが、以降ではその中でも今年特に大きな動きになると思われるWeb 2.0技術の企業システムへの浸透と、XML-DB の動向を詳しく見ていくことにする。